コールセンター業務を効率化するIVRとは

一口にコールセンターと言っても組織形態はさまざまで、規模の大きさに伴って担当部門が細分化されているケースも多いです。コールセンターは顧客の窓口であり、顧客の満足度をアップさせるためには、担当部門へスムーズに誘導することが求められます。
IVRの導入は、業務の効率化も期待できます。ここでは、コールセンター業務を効率化するIVRの仕組みや種類を解説します。
IVRの仕組み
IVRはInteractive Voice Responseの略称で、自動音声応答システムを指します。顧客からの連絡を受けた際にまずは自動音声で案内をし、希望する問い合わせ内容に応じて音声認識やプッシュボタンによる操作で、担当部門のオペレーターに振り分ける仕組みです。
IVRは、コールセンターをはじめとする次のようなさまざまなシーンで活用されています。
- 受付窓口
- コールバック予約
- オペレーターに対する顧客満足度調査
- 最新情報の提供
- SMS配信
- 本人認証(ワンタイムパスワードの通知等)
- 宅配の再配達受付
コールセンターの業務はオペレーターによる対応が多いですが、その一部をIVRに代行させることが可能です。その結果、コールセンターの業務効率化や人件費などのコストカットにつながります。
オンプレミス型とクラウド型の2種類がある
IVRのシステムにはオンプレミス型とクラウド型の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
【オンプレミス型】
オンプレミス型は、CTIシステムと呼ばれる専用装置を用いてシステムを構築します。設置場所は、オペレーターが業務で利用する電話やパソコンがある建物内です。運用は自社で管理するため、必要に応じてカスタマイズすることもできます。
その一方で、サーバー専用パソコンの導入やソフトウエアの購入が必要になるので、構築までの時間や初期費用がかかりやすいです。構築までの時間は1年程度が目安です。初期費用は数百万円~数千万円が一般的ですが、規模が大きい場合は1億円以上に及ぶケースもあります。
【クラウド型】
クラウド型は、サービス提供会社のサーバーをインターネット経由で間借りして利用する仕組みです。自社の建物内でシステムを構築する必要がないため、導入までがスピーディーな上に初期費用もほとんどかかりません。
しかし、運用や管理はサービス提供会社が行うため、オンプレミス型に比べてカスタマイズの自由度は低いです。
IVRでできること・活用シーン

IVRは自動音声応答システムなので、オペレーターに代わって顧客に案内を促したり情報を伝えたりすることが可能です。ここでは、IVRの役割や活用が期待できるシーンを解説します。
担当オペレーターに自動振り分け
IVRを導入した場合、顧客の問い合わせ内容に応じて適切な担当部門への振り分けを自動的に行えます。まずは、顧客からの連絡を受けると「~については1を、~については2を…」という音声ガイダンスが流れます。
その後、顧客が音声認識やプッシュボタンによる操作を行い、担当部門に振り分けられるのが一般的な流れです。例えば製品の操作方法と修理などの複数の担当部門がある場合は、それぞれのルートを設定できます。
顧客側は連絡から担当部門への待ち時間が短縮され、エンジニアのような専門的な知識を持つ担当者へもスムーズにつながります。企業側にとっては、業務の効率化と共に代表窓口となるオペレーターの人件費削減や顧客満足度アップが期待できます。
混雑時のあふれ呼対策
曜日や時間帯などの状況によっては、顧客から連絡があってもオペレーター数が足りずに対応できなかったり回線数を超過して話中状態が続いたりすることがあります。このようにいつまでも電話に応対できない状態は、「あふれ呼」と呼ばれています。
「あふれ呼」状態が続くと、なかなか電話がつながらないので顧客の不満が募りやすくなります。電話を受けた後は本来の問い合わせのほかにクレーム対応の必要性も出るため、業務の大きな負担につながります。
「あふれ呼」状態を回避するためには、IVRの導入が有効です。
IVRには、混雑時に連絡した顧客に対して後でかけ直してもらうよう自動音声応答する、または折り返し電話の予約を自動受付する方法があるからです。いずれかの方法を用いると、顧客は自動音声応答によって混雑時であることを認識できます。
オペレーターは、混雑が解消した時間に予約受付した顧客へ順次連絡することが可能です。システム上で予約状況が把握できるため、連絡漏れによるトラブルを事前に防げます。
定型作業の自動化・無人化
IVRの基本的な機能は、連絡を受けた際に音声ガイダンスを流し、その後の操作によって効率よく顧客の要望に対応することです。しかし、最終的にオペレーターにつなぐことだけが目的ではありません。
内容によっては、定型作業の自動化や無人化を実現することが可能になります。流れとしては、連絡を受けた際に流れる音声ガイダンスにボタン操作や音声入力を含めることで顧客に情報入力を促す形です。
IVRによって定型作業の自動化や無人化は、次のようなシーンでの活用が期待できます。
- 資料請求の受付
- 宅配便の再配達受付
- テレホンバンキング
定型作業の自動化や無人化によって、オペレーターやスタッフの人件費の削減につながります。
不在時や営業時間外の対応
IVRは自動音声応答システムなので、オペレーターの離席や休暇による不在時で対応できないときに便利です。多くのコールセンターは受付時間が設けられているため、時間外や企業が指定する休日は対応できないケースもあります。
しかし、次のような内容を自動応答時に設定しておくと、受付時間外でも対応可能です。
- メッセージ内容の録音
- 折り返し電話の予約を自動受付
- 受付時間内のかけ直しを促す案内
折り返し電話の予約を自動受付に設定しておくと、顧客が日時を指定できるので待ち時間の短縮につながります。
IVR導入のメリット

IVRの導入は業務の効率化が期待できる企業だけでなく、求める情報までスムーズにつながる顧客の双方がメリットを得られます。ここでは、IVR導入のメリット3つを詳しく解説します。
IVRを導入する際には、ここで解説する内容を踏まえて自社にとってどのくらいメリットが大きいかを見極めましょう。
人件費のコスト削減につながる
IVRを導入するメリットのひとつ目は、オペレーターの人件費の削減につながることです。これまではオペレーターが担っていた業務の一部は、IVRの自動音声応答によって無人化できるからです。
例えば代表電話の担当オペレーターを雇用していた場合、担当部署への振り分け作業が無人化できます。また、エンジニアなどの専門知識を有する担当者がいる部門へ 振り分ける場合、最初に電話を受けるオペレーターも一定の知識が求められます。
しかし、IVRの導入によって専門知識を有する担当者がいる部門に自動で振り分けられるため、オペレーターの教育コストの削減が見込めます。
オペレーターの負担が軽減する
IVRを導入するメリットのふたつ目は、オペレーターが担う業務の負担軽減につながることです。これまでは、オペレーターが行っていた資料請求の案内や最新情報の提供などの一部業務が自動化されるからです。
また、オペレーターを介さずに直接担当部門につなげることができるため、コールセンターの応答率がアップします。応答率とは、コールセンターへの連絡件数に対する対応件数をあらわした割合です。計算式は次の通りです。
応答率(%)=対応件数÷連絡件数×100
応答率は、大規模なコールセンターでも1%上げることが難しいといわれています。数値が高いほどつながりやすいコールセンターとして高い顧客満足度も期待できるため、IVRの導入によって応答率のアップが目指せます。
人手不足が改善する
IVRを導入するメリットの3つ目は、オペレーターの人手不足の改善が期待できることです。コールセンターは慢性的な人手不足だといわれています。その理由は、クレーム対応によるストレスや長時間労働の割には低賃金などさまざまです。
月刊CALL CENTER JAPANが実施したコールセンター実態調査(※)によると、新人オペレーターの離職率は5年前よりも高いことがわかっています。入社して1年以内の離職率が71%以上と回答した企業は実に22%です。
オペレーターの人手不足を解消することは、もはやコールセンターを設置する企業の課題だといえます。慢性的な人手不足を改善するためには、業務の効率アップを図ることが必須です。
そこで役立つのがIVRの導入です。オペレーターが担っていた業務の一部を無人化できるため、人手不足を解消すると共にコールセンター全体のキャパシティアップが期待できます。
※参照:月刊CALL CENTER JAPANによるコールセンター実態調査(2018年)
IVRの導入を検討した方が良いケース

IVRは案内を促したり情報を伝えたりする業務などを音声で自動対応するシステムなので、導入によってメリットが得られるのはコールセンターが設置されている企業です。
また、顧客からの問い合わせが多く、曜日や時間帯などの状況によっては「あふれ呼」と呼ばれる状態が発生している企業も、IVRの導入によって業務の効率化が図れるのでおすすめです。
しかし、IVRの導入にはコストがかかるため、顧客からの問い合わせが月に数件程度の場合は費用対効果を考えた上で検討した方がよいでしょう。
IVRとSMSの連携でさらに効率的に

自動音声応答システムのIVRは、SMSとの連携で業務の効率がさらにアップします。自動音声だけでは不十分な情報がある場合、SMSで補足情報を送信することで詳細な情報をスムーズに届けることが可能です。
例えば問い合わせ内容が支払い方法の場合、まずは顧客が音声認識やプッシュボタンで「支払い方法」を選択します。その後、支払い方法に関する説明やウェブサイトのリンクが顧客のスマホやガラケーにSMSで送信される仕組みです。
また、「あふれ呼」対策にもIVR+SMSは有効です。前述の通り、「あふれ呼」を待たせるほどコールセンターの満足度は下がります。一方で、問い合わせ内容は必ずしも電話で応対するほどの必要がないものも多く存在します。例えば、IVRで「只今お電話が込み合っています。SMS(ショートメッセージ)で必要情報を受け取りたい方は1をプッシュしてください。・・・」などと応答し「よくある質問」などのURLリンクを速やかにSMSで送ることで、問題を解決できる場合があります。顧客が必要としているのは、あくまで問題を解決するための情報ですので、その手段は必ずしも電話による応対である必要はありません。
SMS配信における各キャリアとの接続方式は安全性の高い直接接続を用いており、ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルの主要4キャリアに対応しています。既に稼働中のIVRへの追加やCTIとのAPI連携も可能なので、簡単に導入出来てさらなる業務の効率化が狙えます。
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IVRの導入を検討しよう

IVRは自動音声応答システムなので、導入することでコールセンターの業務効率化やオペレーターの人件費削減が期待できます。顧客の問い合わせ内容に応じて担当部門へ自動で振り分けるため、待ち時間の短縮にもつながります。
また、自動応答だけでは不十分な情報がある場合は、SMSとの連携によってさらに業務を効率化できます。しかし、システムのタイプによっては初期費用がかかるため、費用対効果を十分に考慮して導入するようにしましょう。