LGWAN(総合行政ネットワーク)とは
LGWAN(総合行政ネットワーク)とは何かを知るために、次の3つについて解説します。
- LGWAN構築の基本方針
- スマート自治体とLGWAN
- LGWANのセキュリティ
以上をチェックし、LGWANの目的から役割まで理解を深めましょう。
LGWAN構築の基本方針
LGWANは、8つの方針に沿って構築されたネットワークです。
- 全ての地方公共団体を収容可能な行政団体に閉じたネットワーク
- 高度なセキュリティを確保
- 情報通信分野における標準的な技術を使用
- 政府共通ネットワークとの相互接続
- 全ての地方公共団体が現実的に負担できる費用で運用
- 各市区町村や都道府県におけるネットワーク規模、多様な情報化の進度や方法の違いを吸収
- 地方公共団体が持つ既存設備の有効活用
- 電子メール、掲示板機能等、業務の横断的サービスを提供
少し複雑ですが、簡単にまとめると、LGWANとは「政府や自治体が相互にコミュニケーションをとれるように構築されたクローズドなネットワーク」であり、高度なセキュリティを備えているということです。
スマート自治体とLGWAN
LGWANは、うまく活用すれば「スマート自治体」の実現ができるとして期待されています。
スマート自治体とは、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の技術を駆使して、職員が行う業務や処理を自動化・簡略化し、効率的にサービスを提供する自治体のことを指します。
総務省は、2040年までにスマート自治体の実現を掲げており、そのために3つの具体的な目標を掲げています。
- 行政手続きを紙から電子へ
- 行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ
- 自治体もベンダー(※)も、守りの分野から攻めの分野へ
※ベンダー:サービスや商品を利用者へ販売する人の意
なぜ2040年が指標となっているかというと、昨今の高齢化・人口減少にともない、2040年に労働力の大幅な減少が見込まれているからです(2040年問題)。
LGWANの8つの基本方針は、まさにこのスマート自治体を実現するための大きな役割を担っているといっても過言ではありません。
LGWANのセキュリティ
スマート自治体の実現を目指すうえでは、LGWANのセキュリティが非常に重要です。LGWANでは公開鍵認証基盤(PKI)の仕組みが採用されており、 全ての地方公共団体が組織認証基盤(LGPKI)を使用しています。
LGPKIとは、Local Goverment Public Key Infrastructureを略した言葉です。盗聴や改ざん、事後否認の防止を可能としており、セキュリティを強化しています。
また、LGPKIをインターネットに設置し、政府認証基盤(GPKI)と互いの認証が可能です。さらに、公的個人認証サービスや各種民間認証局が発行している、証明書の検証が可能となります。
LGWAN-ASPとは
LGWAN-ASP(Application Service Provider)とは、LGWANを介して公益法人や民間企業など地方公共団体にサービスを提供するものです。 ASPの提供するサービスにより、自治体は電子申請システムやグループウェアなどの、高度なシステムを利用することができるのです。
LGWAN-ASPを導入することで、高度なサービスを自治体が独自開発するよりも、時間とコストを節約できるメリットがあります。
LGWAN-ASPを詳しく知るために、次の2つをおさえておきましょう。
- LGWAN-ASPの目的
- LGWAN-ASPの種類
LGWAN-ASPの目的
上述した通り、LGWAN-ASPの目的は、各地方自治体がより経済的に、標準的なネットワークシステムを導入することにあります。
デジタル化にともなう自治体ごとのIT化格差を軽減しつつ、高い品質を維持したアプリケーションツールを全ての公共団体が共同利用できるように努めています。
LGWAN-ASPの種類
LGWAN-ASPには、次の5つの種類があり、それぞれ特徴があります。
- 電子申請や電子入札などのアプリケーション・情報コンテンツなどのコンテンツサービス
- サーバー機器の提供・運用管理を行うホスティングサービス
- ホスティングサービスのための設置スペースや設備を提供するファシリティサービス
- ホスティングサービスをLGWANに接続するための通信サービス
- IPアドレスなどのネットワーク層・基盤アプリケーションサービス
このうち、地方公共団体が利用できるのは1つ目の、電子申請や行政情報などに関するアプリケーション、コンテンツサービスとなっています。
LGWAN-ASPのアプリケーションサービス及び、コンテンツには、次の3つの事例があります。
- ふるさと納税システム
- 人事給与システム
- テレワークシステム
ふるさと納税システムは、集まった寄附情報を管理するためのシステムです。ふるさと納税システムは、SaaS(Software as a Service)型で提供されているため、 初期コストが安価となっており、導入にあまり時間を要しません。
人事給与システムは、一般的な人事管理や給与管理を行うためのシステムです。人事給与システムも、 ふるさと納税システム同様にSaaSで提供されているため、低コストで業務の効率化が可能です。
テレワークシステムは、自宅のインターネットの回線から、LGWANに接続されている業務用端末へと接続を可能にするシステムです。 自宅のPCで、アップデートやウイルス対策ソフトが正常に稼働しているかを自動的に確認してくれます。
LGWAN導入のメリットとは
LGWAN導入のメリットには、次の3つがあります。
- 行政事務の効率化
- 重複投資の抑制
- 住民サービスの向上
以上をチェックし、LGWANが社会にとって果たす役割を理解していきましょう。
行政事務の効率化
LGWANは、地方自治体間や政府共通で使えるネットワークなので、情報交換及び共有がスムーズになり、行政事務の効率化が可能です。
今までは、自治体自身がシステムを構築して保守運用しなければならず、手間がかかっていましたが、 LGWANにより予め用意されてあるASPを利用できるため、従来のシステムと比較して負担が軽減されます。
重複投資の抑制
LGWANは、汎用性のある情報通信基盤なので、地方自治体のネットワークにおける重複した投資の抑制が可能です。 また、投資する必要のあるシステムや設備をまとめられるため、コストの削減もできます。
今までは、地方自治体間で共通して使用できる情報通信基盤がなかったため、個別回線を使用しなければ相手と通信が取れませんでした。 さらに、回線や端末なども必要となってくるため、コストの負担もありました。
しかし、LGWANにより分割されていた地方自治体のネットワークが1つになり、互いに通信できるようになったため、従来の面倒な手続きが不要になったのです。
住民サービスの向上
LGWANの導入によって、国と自治体の連携が今までよりもまとまり、住民が生活する上で必要とする行政情報の提供や届け出手続き等の電子化が進みます。 そのため、住民に提供されるサービスの品質向上も期待できます。
また、徹底してセキュリティが保たれているため、盗聴などによって重要な情報が漏洩するのを防ぐことができます。
セキュリティ面だけでなく、災害時も想定して環境が整備されているため、地震などの緊急事態においても業務を継続できます。
高いセキュリティで行政業務の効率化を
LGWANは、高いセキュリティを備えた、行政業務の効率化を実現するネットワークです。
行政専用のクローズドネットワークなので一般市民の目に触れることはほとんどありませんが、LGWANにより、 電子メールやWebページなどを安全に使用できるようセキュリティの保全がなされるため、普段の生活でも欠かせない存在と言えます。
LGWANの役割やメリットを正しく理解して行政サービス向上に役立てていきましょう。