
まずMAの基礎知識として、次の2つを解説します。
- そもそもMAとは
- MAでのシナリオの役割
MAの市場規模は、2026年には865億5,000万円に成長すると予測されている重要なツールです。2020年以降、世界的に購買行動のオンラインシフトが進み、よりMAの需要が増えているため、今からしっかりと把握していきましょう。
そもそもMAとは
マーケティングオートメーションの略称であるMAは、マーケティング活動を可視化しさらには自動化するツールのことです。 特に顧客開拓における部分に重点を置いており、見込み客を育成してくれます。
通常、企業は見込み客の興味・関心に対して最適な情報を最適なタイミング・方法で提供するために人材の確保が必要になります。
MAを導入すると作業負担を減らせる上、効率的な顧客開拓を実現できます。MAの基本的な機能は以下の通りです。
MAが対応している機能 | 概要 |
見込みの選別 |
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視覚的な点数付け |
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施策の実施と条件設定 |
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自動メール配信 |
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社内通知 |
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ランディングページ・フォームの支援 |
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コンテンツの最適化 |
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CRM・SFA統合機能 |
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API連携機能 |
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レポーティング機能 |
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MAは国内外様々な企業で提供されているので、機能や活用方法を理解しているとツールを選びやすくなります。
MAでのシナリオの役割
MAでは「シナリオ」が重要視されます。ここでの「シナリオ」とは、顧客とのコミュニケーションの筋書き、また見込みから顧客になるまでの道筋を指します。
具体的には、見込み顧客に対してどんなアプローチをするのかを定めて、効率的にコミュニケーションを取ります。 あらかじめシナリオを設計していない状態でスタートすると、顧客になる以前に興味を失われる可能性が高くなりがちです。
シナリオを立ててからMAを活用すると、アプローチすべきタイミングと顧客を逃さないため、業務がより効率的に行えます。 代表的な顧客アプローチ方法であるメール配信も、シナリオ構成を必要とする手法の1つです。
MAが持つ、コンテンツ配信の相手やタイミングを自動化するメリットを最大限活かすためには、シナリオの作成が必要不可欠になります。
MAのための効果的なシナリオの設計方法

最大限にMAの効果を活かすためには、シナリオの設計は必須です。シナリオを設計する流れを紹介します。
- アプローチするターゲットの選定
- ターゲットへのアプローチタイミングの決定
- ターゲットに合ったコンテンツの作成
- ターゲットとつながる方法の決定
それぞれの流れを詳しく解説していきます。
1:アプローチするターゲットの選定
MAにおけるシナリオではターゲットの選定が重要です。なぜなら、どんな属性を持つ顧客とコミュニケーションをとるべきなのか明確に決めておかなければ、最適な施策を打つこともできないためです。
アプローチするターゲットを選定する方法は、次の3つです。
- ライフサイクル軸
- 顧客属性軸
- 顧客行動軸
ライフサイクル軸とは、企業と顧客の関係性を軸にして考え分類する方法です。見込み客、新規顧客、一般顧客、ロイヤル顧客、休眠顧客など段階的に顧客のカスタマージャーニーを分けて考えていきます。
シナリオ設計のゴールに沿ったカスタマージャーニーをイメージしてペルソナ設計を行うと作りやすいです。
顧客属性軸とはライフサイクル軸に似ており、名前の通り顧客を年齢・性別・収入などによって、カテゴライズする方法になります。
最も効率的にターゲットを設定する方法は顧客行動軸です。例えば、資料請求をしたが購入に至っていないなど、何かしら行動を起こしているのにその後の具体的な変化がない人はターゲットにしやすいといえます。
顧客の属性や行動ごとにどんなシナリオ展開をさせるのか検討しましょう。
2:ターゲットへのアプローチタイミングの決定
ターゲットを決めた後は、いつアプローチをするのかを決定します。アプローチのタイミングは次の3つを軸にしましょう。
- ターゲットがどんな行動を取った時にアプローチするか
- どんな時間帯にアプローチするか
- アプローチの頻度はどの程度か
しっかりとタイミングが合えば顧客に適切なタイミングで有益な情報を届けられます。顧客の自社製品への関心度や購入意欲を高めていけるので、いつアプローチするかもシナリオ設定において重要です。
タイミングを間違えると、顧客にマイナスの印象を与える可能性があるので注意してください。具体的には、必要以上の頻度や生活サイクルに合わない時間帯でのアプローチなどが挙げられます。
3:ターゲットに合ったコンテンツの作成
誰にいつアプローチをするのか決定した後は、どんなコンテンツを作成するのかを決めます。新規やリピーター、しばらく休眠している顧客などに分けてコンテンツの方向性を決めていきましょう。
例えば、新規顧客の場合は自社製品の利用をスタートしたばかりなので、よりブランドを知ってもらうコンテンツや製品をより効果的に使用する方法などを配信しましょう。信頼度を上げることでリピート率を高められます。
購入・利用経験があるが現在は休眠している顧客には、インセンティブコンテンツを配信し、改めてベネフィットを明確に提示しましょう。適切な内容を配信できれば関心度をアップできます。
全ての見込み顧客に対して、同じコンテンツを配信してしまうと「印象に残らない」「関心度が高まらない」という可能性があります。コンテンツが顧客ニーズに合致していないと離脱されてしまうので注意して作成しましょう。
4:ターゲットとつながる方法の決定
最後にターゲットとつながる方法を決めていきます。顧客とのコミュニケーション方法を定める部分です。
コミュニケーションの方法は、次のようにオンラインとオフラインに分けられます。
オンラインのコミュニケーション方法 | オフラインのコミュニケーション方法 |
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オンラインのコミュニケーション方法は、少ないコストでターゲットにアプローチできる点が特徴です。MAでは、配信内容の効果測定も可能なので費用対効果を検証しやすいです。
オフラインのコミュニケーション方法は、オンラインよりもコストがかかりやすいですが、購入意欲やロイヤリティが高い顧客に対しては有効な場合が多い点がメリットと言えるでしょう。
コミュニケーションの最終地点は顧客に行動してもらうことです。顧客がアクションしやすい手段を選びましょう。
MAの3つのシナリオ事例

MAのシナリオを作る際の流れを理解できたら、具体的にどのようなシナリオを作成していけば良いか考えましょう。次の3つのシナリオ例をご紹介します。
- 資料請求からのアプローチ例
- サイト閲覧からのアプローチ例
- 比較中の見込み客へのアプローチ例
アプローチ例を理解していると、成果を出しやすいので参考にしてみてください。
資料請求からのアプローチ例
資料請求をしてくれた顧客は、基本的に自社に対して何かしら関心を抱いています。しかし、行動に至っていない場合、原因は複数考えられます。
- じっくり検討する時間がない
- 担当者が異動
- 競合他社に興味を持っている
検討する時間がなく決断が先延ばしになっている場合や他社に興味を持っている場合は呼び戻しが必要であり、そこで効果的なのがステップメールです。 ステップメールで定期的に関心を抱いてくれそうな情報を送りコミュニケーションを図ります。
内容は自社製品のコラムや新商品情報を盛り込み、何度メールをしても反応が得られない際は、見込みが薄いと判断して別のセグメントに移動しましょう。
サイト閲覧からのアプローチ例
企業のWebサイトを閲覧した顧客が、興味を持っているのかどうかは閲覧したページや滞在時間によって分かります。例えば、他社比較を意識したページを見ている顧客は購入意欲があると言えるでしょう。
他社比較をしながら購入を検討している顧客には他社に先駆けたアプローチが必要になるため、顧客がアクションを起こしたくなるシナリオ設計が重要です。
例えばページを見ているときにポップアップで「製品デモセミナーのご案内」と表示するなどし、行動を促しましょう。
ターゲットが自社サービスの利用を検討しているのであれば、実際に体験が可能なセミナーも参加してくれる可能性が高いです。ポップアップは注意がひけるので、行動意欲につなげやすいでしょう。
比較中の見込み客へのアプローチ例
他社比較中のターゲットの中には、資料請求のみを行い、その後行動していない人も多くいます。もしくは、以前ポップアップで訴求したものの問い合わせに至らなかった場合もあるでしょう。
比較して離脱した顧客をターゲットにする際は、製品資料のダウンロードを促すためのリ ターゲティング広告を活用します。リターゲティング広告は、一度ホームページに訪れたことがある人に絞って広告を表示させられるのでピンポイントのアプローチが可能です。
リターゲティング広告は、顧客が「なんとなく気になるけど検討で止まっている」という感情の後押しができるので、顧客育成施策としても活用ができます。
作成したシナリオで成果を出すポイント

作成したシナリオで成果を出すポイントは、次の3つです。
- ターゲットに関するできる限り詳細な情報を収集する
- 定期的に作成したシナリオを分析
- 導入するMAツールを厳選する
各ポイントの詳細を解説していきます。
ターゲットに関するできる限り詳細な情報を収集する
ターゲットに関するできる限り詳細な情報を集めるとニーズに合わせたコンテンツを提供できます。連絡先だけではなく、年齢やその人が所属している企業、肩書きなど情報が多ければ多いほど相手に適したシナリオを作成できます。
情報を集める方法は、オンライン・オフラインによって以下のように異なります。
オンラインでの情報収集方法 | オフラインでの情報収集方法 |
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近年、顧客行動はデジタル化しているためオンラインでの情報収集の方が活用しやすいでしょう。ニーズにマッチした情報をWebサイトに載せる、 興味を抱いてもらえそうな資料のダウンロードを可能にすると、情報を収集しやすくなります。
定期的に作成したシナリオを分析
一度作ったシナリオが、全て成果につながるものではありません。特にBtoBの場合はそもそもの見込み顧客が少なく、 時間をかけてシナリオ作成をしても十分に効果が発揮できない可能性があります。
そのため、シナリオを作成した後も定期的に結果を分析し、現在の方針で継続するのか別の方向にシフトチェンジするのかを検討します。 メール配信だけでは見込み顧客の関心度が高まらない場合もあるため、定期的なシナリオ分析を行っていきましょう。
また、シナリオを作成し、無事目標達成した後でもさらに数字を伸ばせる可能性もあります。 MAのシナリオはあくまでマーケティング施策の1つとして認識し、分析と改善を繰り返していきましょう。
導入するMAツールを厳選する
シナリオの成果を出すためには、導入するMAツールを厳選することが大切です。大きく分けて次の2点を意識してください。
- 自社サービスはBtoB、BtoCのどちらなのか
- 自社のリード数はどのくらいか
自社サービスがBtoBかBtoCかで重要度の高い機能が異なります。BtoBの場合、企業の購入活動は意思決定に時間がかかるため、 長期的なアプローチを可能にする機能が搭載されているかを確認しましょう。
BtoBの場合は見込み顧客を育てていく時間が必要になるので、その分ステータス管理やスコアリング機能が重要です。 また、月額数万円で利用できるものから数百万円かかるものまでありコストもかなり違います。
コストと機能性の良さはリンクしている場合が多いので、自社のリード数や欲しい機能に応じて導入するMAツールを選びましょう。
MAの運用でよくある失敗例

MAを運用する上でよくある失敗例は、次の3つです。
- MAの導入自体が目的になっていた
- 提供するコンテンツに魅力がない
- MAの担当者を決めていない
効果的にMAを運用するためには、失敗例も理解しておくと回避しやすいと言えます。ぜひ参考にしてみてください。
MAの導入自体が目的になっていた
とにかく万能だからといって、MAの導入がそもそもの目的になってしまっていると具体性のない運用となり、成果は得にくくなります。
目標数値を立てずに「MAツールを入れていれば成果が上がる」と過信して運用すると失敗しかねません。MAツールをなぜ導入したいのか、まずは目的を整理して導入後の目標を定めましょう。
またMAを導入しただけで満足していると、機能を使いこなせない可能性があります。十分に効果を実感するためには、しっかりと目的意識とMAの機能について理解しておくことが大切です。
提供するコンテンツに魅力がない
自社コンテンツが少なすぎると、ニーズの顕在化を把握することはできません。コンテンツの細分化や更新もMAツールを活用する上で欠かせない要素です。
顧客が魅力だと思えるコンテンツを提供していなければ、MAツールを導入していても、結局顧客は離れていってしまいます。
そのため、リードの興味度合いを的確に判断するためにも、導入前に自社コンテンツの質と量を十分に確保しましょう。コンテンツ量が多く、顧客ニーズに応えられるのであれば効果的な運用が可能です。
MAの担当者を決めていない
MA導入後に失敗する企業の多くは、「自動ツールだから大丈夫」と担当者を決めずに運用を開始したことで十分な分析ができず運用が難航しています。そのため、MA担当者を決めることでMAと営業の橋渡し的存在を作り、円滑な運用を実現しましょう。
MAは自動ツールですが、ツール任せにしてしまう、営業担当者が掛け持ちで取り組むなどは避けましょう。
またシナリオを作って運用終了ではなく、その後も適宜スコアリングや成果実績を確認しつつ見直しが必要になります。こうした一連の業務は、他の業務と掛け持ちでは難しく、選任の担当者を設けて取り組みましょう。
MAのシナリオに従って効率的な営業を

MAは顧客開拓に欠かせない自動ツールです。MAの効果を効率的に得るためには、シナリオ作成がカギと言えます。
顧客ニーズやターゲットの特徴をよく理解して、シナリオを作り、適宜見直しをしていくことでより効果が得られます。 通常であれば人員が必要になる営業活動も、MAを利用すると負担の軽減が可能です。業務効率と営業力向上に役立つMAを使いこなしていきましょう。